2016.06.23 Thursday | 愛用者インタビュー

大分・湯布院「アトリエとき」訪問記

時松先生のろくろ

ろくろ作業中の時松辰夫先生。

こんにちは、木固めエース普及会事務局・オンラインショップ担当の村上です。
去る6月18日から6月21日の4日間、大分は湯布院町の「アトリエときデザイン研究所」の時松辰夫先生の元へ取材に行ってきました。

時松先生は、1980年代に東北工業大学工業意匠学科に客員研究員として在籍中、岩手県大野村(現 洋野町大野)や北海道置戸町にて、工業デザイナー・秋岡芳夫の右腕として工芸を通した町づくりに尽力した方です。
その後、平成3年に「アトリエときデザイン研究所」を開設。以来400人以上の木工家を指導し、現在も全国各地へ赴いて木工芸を通じた地域再生のプロジェクトを精力的に推進されています。

何を隠そう、当会で販売している「プレポリマー」は、先に紹介した大野村での、地場の木材を使った学校給食器を作るためのプロジェクトから生まれたものです。学校給食というハードな使用環境にも耐え、かつ食品衛生法をクリアした塗料が必要であったこの計画に、時松先生は既に販売されていた文化財補修用の木固め剤「キガタメール」の性能に着目し、メーカーである寿化工と共に「プレポリマー」を開発したのです。

というわけで、今回は昭和のクラフト運動のキーパーソンの一人で、さらに「プレポリマー」の開発に携わった時松先生への取材ということで、出発前からやや緊張気味でした。私にとっては教科書に出てくる歴史上の偉人か、もしくは生ける伝説といった印象の方だったのです。
しかし、実際お会いしてみると、話す言葉は理論的でありながらとても温厚な方で、仕事への姿勢や哲学、そのお人柄に触れ、結果として聞き知った経歴を全部忘れても自然と「先生」と呼ばざるをえないというほど感服して帰ってまいりました。

アトリエときへのアプローチ

アトリエときのショールームに続く緑の小道。

「アトリエとき」は、観光地である湯布院のメインストリートからちょっと外れた、閑静な場所にあります。もともとは埋立地で、開設当初はまばらだったという木々も、今では建物をすっかり覆い隠すように立派に成長しています。お店の入り口へは緑のアーチをくぐるような感じになっていて、これはもうワクワク感が否めません。

アトリエとき店内

店内の様子。アトリエときだけではなく、時松先生が指導した産地の商品も並ぶ。

店内は大小様々な木の器、カトラリーが並びます。時松先生は人の生活を豊かにするものを作らなければ意味がない、と「用の美」を標榜されています。形の美しさはもちろん、唇に触れた時の感触、持ちやすさ、収納のしやすさ、耐久性なども考慮され、改善を重ねてきたそうです。実際、どの作品もシンプルで汎用性が高いであろうものが多く、同じデザインのもののサイズ違いが多く取り添えられていました。

以下は、アトリエときのFacebookからの引用です。

「規範原型」とは、量産品のためのモデルづくりを指し、83年前に日本の工藝指導所でドイツの建築家ブルーノ・タウトが説いたものづくりの指針です。真似や思いつきではなく、市場調査をし、図面を書き、原寸モデルを作り、試作を何度も繰り返し、本来あるべきマスターモデルを完成させたうえで同等のもの作るという手仕事の手法のことです。アトリエときでは、芸術家として制作するのではなく、マスターモデルをもとに品格のあるものを一定量生産し、生活社会に送り出すクラフトを目指しています。

なるほど、実際並べられている商品を見ると、なるほどこういうことかと納得できました。
品格という言葉にずしりと重い誇りと責任を感じます。

時松先生によるウレタン塗装(エステロンカスタムDX)の実演。

さて、今回の訪問の目的のひとつは、実は塗装の実際の工程を詳しく記録することでした。
我々取材班も、指導を受けながら体験し、詳しく解説していただきました。内容はオンライショップの「プレポリマーの塗装方法」に反映させる予定ですので乞うご期待!

工房の様子

工房の様子。

工房のいたるところで、長年にわたって培われてきたであろう創意工夫の跡が見られました。手作りの道具も多かったです。実際の塗装技術だけでなく、環境づくりも大切だなぁと感心しきり。

食事風景

昼食はもちろんアトリエときの器で!感動的な美しさと美味しさでした。

取材中は何度か食事をご馳走していただきました!もちろん器はアトリエときの名作たち。盛り付けも非の打ち所がなく、ほとんどプロのフードスタイリストさん並みのクオリティで、しかも美味!毎食お腹がはち切れんばかりにいただきました。

アトリエときでは毎年研修生を募集しており、1年半から4年ほど、時松先生のもとで腕を磨いて独立されていくそうです。研修の課題としては大きく3項目あり、まずひとつめは当然木器を「作る」ということ。そして2つめの課題がこんな見事な器使いの理由となっているであろう「使う」ということでした。

どのように使うか、どのように盛り付けると美しいのか。生活者として実際に料理し、使ってみる、食べてみる。そこで磨いた感覚が実際の器作りに役立つというのは納得でした。実習生には当番制で、毎日料理を作ることを課しているそうです。ご飯作りもこちらでは修行の一環なんですね。

木の葉プレート

工房での食事でも大活躍していたアトリエときの代表作、木の葉プレート。

そして3つめの課題が「売る」ということでした。 
これは2つの側面があります。まずは生活していくための「売る技術」。これは、「使う」という課題とリンクしていると思いますが、いくら器作りの技術があっても最終的に売らなければ生活が成り立たないというリアルな課題です。実際に研修生の方は、写真撮影やホームページの管理など、制作以外の仕事も多くこなされていました。
最終的な結果を出し、生産を継続させる術を学ぶところまでを研修課題としているところは、やはり地域再生のプロジェクトを指導している時松先生ならではといったところです。

そして「売る」という課題のもう一つの側面が、「社会的な責任を持つ」ということです。
特に「使う人の生活が豊かになるものを作らないといけない」という時松先生の言葉が印象的だったのですが、そこには「売る」と同時に作り手として「使う人の生活を豊かにする」責任が生じるという厳しい哲学がありました。
そして時松先生の目線はさらに遠く、使う人の住む地域にまで向けられています。

作る、使う、売る。この3つの研修生への課題が、時松先生、そしてアトリエときのものづくりを象徴しているようで、非常に感銘を受けました。

時松先生

上塗りの出来を厳しい目で見る。

というわけで、取材中は時松先生のその時々の言葉に触れ、感銘を受けること数限りなくといった感じで、すっかり感服させられました。肝心の塗装方法もしっかりと記録してまいりましたので、できるだけ早くユーザーの皆様にお届けできるよう、編集作業を頑張ります!動画でも撮影したのでよりわかりやすくお届けできるかと思います。
とにかく私は伝え手として、責任を持って時松先生の技をお伝えします。しばしお待ちください!

アトリエときでは現在研修生を募集されています。
詳しくはこちらのブログをこ参照ください。
→平成28年度アトリエとき技術習得研修生 受け入れのご案内



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