2017.12.27 Wednesday | 連載・木の器作り

白木の器作り・その5「塗装場の環境づくり」

本連載は、木固めエース普及会事務局のあるモノ・モノのウェブサイトに場所を移しました。次回以降の記事はこちらをごらんください。

こんにちは。ありしろ道具店の有城利博です。

前回、ウレタン塗装で使用する道具について書かせていただいたところ、空調を含めた塗装場の環境づくりに関してお問い合せがありました。今回はそのことについてまとめてみます。

私が使用しているシェア工房には、木工作業場とは区切られた塗装室があります。木工作業中は木の粉が舞います。塗装作業中だけでなく、塗料乾燥中にホコリが塗面に付着することを避けるためにも、できれば専用の部屋をもうけたいものです。

塗装部屋

塗装室は外気を取り入れる簡易的な部屋のため、冷暖房の設備はありません。冬の季節だと、スプレーガンを持つ手が凍りそうになるくらい寒いですし、真夏は汗だくで塗装をしています。ただ、湿度が高いと塗装に悪影響が出るため雨の日はできるだけ塗装を避けていますが、どうしてもという時には塗装前に除湿器をかけて湿度を下げています。

塗装時は塗装室のドアを閉め、排気ファンを使い換気をしています。塗装室の窓の隣に給気口を設けています。ホコリ対策のフィルターには布団のシーツを使用しています(下写真の窓枠右側がシーツ)。

給気口

排気口は煙突のような作りになっていて、その途中に排気ファンがあり、空気は下から上向きに流れるようになっています。そのため塗装対象から外れた塗装ミストは塗装室内を舞うことがなく排気口の方に流れ、煙突の下の方に付着するか工房付近の地面に落下し、空気だけが煙突の上部から排気されます。そうすることで空気の流れを作り、作業者の安全対策をして、しかも工房の外に塗装ミストを排出することを防いでいます。

排気口

塗装室の排気口を外から見ると煙突のような作りです。この途中に排気ファンがあります。年末には排気ファンと煙突内部に付着した塗料を取り除く大掃除をしています。

排気口

ここまでの塗装設備を個人の作り手が整えるのはなかなか大変です。この工房は最初にNPO団体が用意してくれた設備を、そのまま仲間3人でシェアしているので、本当に助かっています。

塗装室には一枚のメモ書きがずっと貼られています。時松辰夫先生のメモです。

時松辰夫先生のメモ

「流体力学」という難しい言葉から始まりますが、空気の流れを読むという点は塗装室の環境づくりではとても重要なことです。その環境づくりから、作業の動作、作業効率、そして「美」を求めるところまでがこの一枚にまとめられています。この一枚のメモを塗装のたびに読み、自らの行動を確認しています。なかなか進歩しないのですが……。

時松先生にはいろいろ大切なことを教わりました。 毎年年末に工房で餅つきをするようになったのも時松先生の一声からです。毎日頑張ってくれた機械ひとつひとつに鏡餅を飾り、お世話になっているご近所の方々にお餅をふるまうことで感謝の気持ちがうまれ、よい関係が築けます。今では年末に餅つきをしないと、年を越した気がしないようになりました。

今年も残すところあと数日となりました。工房の大掃除と餅つきが一年最後の大仕事です。9月から始まったこのブログ記事、読んでいただきありがとうございました。来年には器づくりの記事も投稿しますので、引き続きよろしくお願いします。それではよい年をお迎えください。

文・写真:有城利博(ありしろ道具店代表)


2017.12.19 Tuesday | 連載・木の器作り

白木の器作り・その4「ウレタン塗装に必要な道具」

こんにちは。ありしろ道具店の有城です。

今週は、来年春に静岡県三島市で開催される記念行事で使用する「盃」のウレタン塗装をしています。材は前回のブログで紹介した器と同じく御殿場のカエデです。この仕事のために伊豆周辺のカエデを探していたのですが、お世話になっている工務店や製材所の方々のご理解をいただき使わせていただくことができました。本当にありがたいことです

前回のブログでは使用している塗料について書きましたが、今回はウレタン塗装に必要な道具類について解説をします。

「盃」のウレタン塗装

私はウレタン塗装を行うとき、スプレーガンを使うようにしています。もちろん刷毛塗りも選択肢としてはあるのですが、均一で薄い塗膜を刷毛でムラなく塗り重ねていくということは、ものすごく難易度の高い作業です。そして刷毛の選択と管理も、手軽そうでいて意外と大変です。

一方、吹付塗装は、ホームセンターなどでも購入できる初心者・日曜大工向けのスプレーガンでも十分きれいな塗装が可能です。工房ではアネスト岩田社製のPS-9513B-04 というグレードがDIYのものを使用していますが、塗装に関して大きな問題が生じたことはありません。

吹付塗装の場合、塗装不良は高湿度などの気候面や塗料の粘度の調整ミスなどによって生じることが多いです。エアサンダーや掃除のためのコンプレッサーをお持ちの方は、基本的にはスプレーガンがあればエアスプレー塗装ができますが、私はより確実な塗装をするために、コンプレッサーからの圧縮エアーの減圧と清浄のためのエアートランスホーマーを設置しています。

また、ウレタン塗装で使用する消耗品は「木固めエース普及会オンラインショップ」で塗料と一緒に購入しています。

(1)美吉野紙
ウレタン塗料をスプレーガンのカップに移す時に細かなホコリを取り除きます。スプレーガンのつまりや塗膜面のホコリ対策になります。

(2)タフグローブ
木固めエースやプレポリマーを浸透させる作業時に着用します。ソフトな感触なので細かな作業にも適しています。写真は木固めエース普及会事務局からお借りしました。師匠の時松辰夫先生が実際に作業されています。塗装室や道具の綺麗さなど写真を見るだけでも時松先生のものづくりや人に対する心遣いが感じられます。

(3)有機ガス用吸収缶
木固めエース浸透作業やスプレーガンでの塗装作業中は防毒マスクを着用します。ウレタン塗料の有機溶剤がフィルターに付着すると、次第に息苦しくなってくるので、吸収缶の交換をおすすめします。

その他、塗装で使用するウエスは、近くのクリーニング会社から旅館で使用済みとなった布団のシーツを分けていただいております。観光地ならではですね。小さなことではありますが、地域のものを活用できるということはうれしいことです。

肝心の木の器づくり工程がなかなか進まず、申し訳ありません。「半割工法」についても近日中に紹介しますので、どうぞ気長にお付き合いください。引き続きよろしくお願いします。

文・写真:有城利博(ありしろ道具店代表)


2017.11.17 Friday | 連載・木の器作り

白木の器作り・その3「私が使っている塗料のこと」

平皿

こんにちは。ありしろ道具店の有城利博です。

ここ数日は、静岡・修善寺温泉の旅館に納品する平皿の塗装に取り組んでいます。材は御殿場のカエデ。身近な木々で作った器を身近な所で使っていただくというのは理想としている仕事で、本当にやりがいがあります。塗装の仕事中という事で、今回の記事は使用している塗料について書いてみます。

(1)プレポリマー PS No.1000(2)エステロンカスタムDXクリヤー(3)エステロンカスタムDX全艶消クリヤー(4)PS-NYシンナー

私が「木固めエース普及会オンラインショップ」を通じて購入している塗料は、以下の4製品です。

(1)プレポリマー PS No.1000
(2)エステロンカスタムDXクリヤー
(3)エステロンカスタムDX全艶消クリヤー
(4)PS-NYシンナー

ウレタン塗装前の木固め剤としては、「プレポリマーPS No.1000」を購入しています。スギやヒノキの間伐材など針葉樹を使うことが多いという理由と、単価(コスト)の安さを考慮しています。なお、広葉樹を木固めする時にもNo.1000を使用していますが、いまのところ問題なく使用できています。

私はプレポリマー浸透後の目止め作業を割愛していますが、導管の大きな材を使用した時に仕上がりをより平滑にしたい場合は、目止め剤の使用をおすすめします。夏場の目止め作業は乾燥が早いためなかなか苦労しますが…。

ウレタン塗料は、中塗り用に「エステロンカスタムDXクリヤー」を、仕上げ用には「DX全艶消クリヤー」を購入しています。以前は仕上げに7分消クリヤーも使用していましたが、最近は艶(つや)消しを好まれるお客さまが多いので全艶消に統一しています。全艶消の主剤はよく撹拌してから使用しないと艶が変わってきてしまいますので、はじめて使う方は注意が必要です。なお、プレポリマー、エステロンカスタムとも、塗装不良を防ぐために純正のPS-NYシンナーで希釈をしています。

しゃもじと料理へら

仕上げの塗料としては、ウレタン塗料をメインにしていますが、商品によっては無塗装のものもあります。たとえばヒノキ材のしゃもじや料理へらは無塗装のままでも、使ううちにいい感じに表情が育ってきています。

くるみ油

お客さまの要望でオイルを塗ることもあります。また、体験やワークショップなどではその場で仕上げられるオイル仕上げにしています。その時は食用で乾性油のくるみ油を使用しています。

拭き漆の器

最近では拭き漆にも挑戦しています。漆に関しては経験が絶対的に少ないので、今は色々な産地や漆販売店のものを試しています。また、近年、木の器の仕上げにガラスコーティングを使用する例が増えて来たように感じます。そちらも関心があるので近いうちに使用感をレポートできればと考えています。

次回のブログではスプレーガンやその他の塗装用道具のことをテーマに書く予定です。

文・写真:有城利博(ありしろ道具店代表)



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