2017.08.18 Friday | イベントレポート

夏休み企画「親子で作るバターナイフ教室」レポート

去る2017年8月6日、夏休み期間中にモノ・モノにて、親子木工教室を開催しました。講師は八王子現代家具工芸学校の伊藤洋平さん。都内で植林されたヒノキと、家具製作の際に出た端材(ウォールナット)を使い、バターナイフを手作りしました。

今回のイベントは、ワークショップの運営を専門に行っている「にっぽんてならい堂」との共同企画として開催しました。午前、午後の2回開催され、どちらも満員で大賑わいでした。4歳の男の子から女性おひとりの参加まで、幅広い年齢層の方々にお集まりいただき、中にはご家族そろって来てくださった方もいらっしゃいました。木工が趣味の私も伊藤先生のサポート役として参加させてもらいました。

材料となる木材は、先生があらかじめ木取りした部材の中から自分の好きな木目のものを選びます。木材にはそれぞれ真っすぐだったり、ぐねぐねと曲がっていたり、いろいろな木目があるのを見て、子供たちは真剣に選んでいました。

バターナイフ作りはまず、厚紙でできた型に沿ってバターナイフの形に切り出すことから始まります。糸ノコと呼ばれる細いノコギリで切るのですが、曲線を切るのはなかなか難しく、苦戦している人も多かったようです。特にウォールナットは硬く、思い通りに切るのは難しいため、自分の切ったものを見て、ちゃんとバターナイフになるのかと心配そうな顔も見られました。

糸のこでバターナイフのかたちに切り出します

バターナイフの形に大まかに切り出した木材を、さまざまな道具を使って整えていきます。まず2種類の金やすりを使ってバターナイフの周囲のおうとつを平らにし、また別の粗いやすりを使い、バターをすくう部分のなだらかな曲線を出していきます。先生によると、ここをきれいな曲線にすることがバターがすくいやすくなるポイントなのだそうです。皆さん集中して作業を進められていましたが、たくさんの慣れない道具に四苦八苦している場面もありました。とはいえ、皆さん短い時間の中でも徐々にコツをつかんで、いつの間にかきれいなバターナイフのかたちに近づいていました。

金やすりでおうとつを平らにしていきます

最後の仕上げはサンドペーパーで傷を取ったり、滑らかにしていきます。どんどん丸みをおびて、目に見えてきれいになっていくのに感激して、作業の勢いを取り戻した人が多かったように思います。すべすべになった面をなでながら目を輝かせる子どもたちを見て、お手伝いしている私もうれしくなりました。

仕上げにサンドペーパーを掛けます

でき上がったバターナイフの塗装にはくるみを使いました。食用のくるみを布で包み、少し砕いて塗るだけで木の保護とツヤ出しに効果があり、昔から使われる手法です。くるみを塗ると、きれいな色になった!と子供たちは大喜び。もっと良い色にしようと何度も何度も夢中になって塗り重ねる子もいました。

同じ型で作り、同じように教わっていても完成作品の姿形はいろいろで、作り手の個性が出て面白かったです。慎重に削っていく子や我先にと削り進める子、道具の使い方がどんどん上手くなる子など、作り方にもそれぞれに個性がありました。

木工の道具を扱ったことがない人がほとんどでしたが、終わってみれば自分だけのバターナイフがちゃんと完成していて、満足そうな顔がたくさん見られました。自分の作品ができたというよろこびと、モノづくりの大変さを味わっていただけたと思います。

モノ・モノ創設者の秋岡芳夫は、工作の楽しさとは工夫して作ることであり、人間にとって大切な営みであるということを、折に触れ提唱してきました。これを機に、工作の楽しさを伝えるワークショップの取り組みを今後とも続けていきたいと思っています。

photo&text:宝樹恵(グループモノ・モノ)


2017.07.05 Wednesday | イベントレポート

トークイベント「木考会とは何か?」レポート

2017年6月23日から25日まで、東京・中野のモノ・モノで回顧展「木考会に集って40年」を開催しました。最終日の25日は出展者を交えトークイベントを行いました。

でく工房の3人。左から故・鈴木和雄さん、故・竹野廣行さん、光野有次さん

木考会の正式名称は「木工を考える会」。でく工房の竹野広之・光野有次・鈴木和雄さんらの3人が中心となり、1977年に結成されました。毎月1回、木工の仕事を目指す若者がモノ・モノに集まり、互いの作品や写真を持ち寄り、木工談義で盛り上がったり、材料や道具の共同購入をしたり、さらに会報『黙木(モクモク)』を毎月発行するなど、さまざまな活動を行いました。

メンバーには木工藝の須田賢司さん(現・人間国宝)、渡辺晃男さん、甘糟憲正さん。木工家具の稲本正さん(現・オークヴィレッジ会長)、井崎正治さん、谷進一郎さん、村上富朗さん、吉野崇裕さん。美術系の大学で木工やデザインを指導する立場になった荒井利春さんや丸谷芳正さんなど、のちに木工界をリードする立場になった人も少なくありません。

普段はひとり黙々と作業をする人、会社の縦割りの中で仕事をする人、これから何を作ればいいか悩んでいる人、そんな若者たちが集まり、お互いに刺激をもらいながら、それぞれの生き方を模索していました。

木考会恒例の自己紹介タイム。ホワイトボードに10の質問を書き出した。

トークイベントでは司会者が用意した10の質問を投げかけ、木考会メンバーの中の適任者が答えるというディスカッション形式で進められました。昔の木考会の集まりでは、大きなテーブルを囲んで、毎月さまざまな議論が繰り広げられたようです。そこには批判や糾弾といったことはなく、お互いを尊重しながら違いは違いとして認め合う雰囲気があったのだそうです。今回のトークイベントで、木考会メンバーが座卓を囲んで座り、その周りを20名ほどの来場者が取り囲んで熱心に話を聞く姿は、昔の木考会の雰囲気を彷彿とさせました。

来場者が木考会のメンバーをぐるりと取り囲む形でトークイベントは開催された。

司会者が用意した10の質問は以下の通りです。

1.木考会はどんないきさつで生まれたのですか
2.木考会が生まれた当時の社会、工芸界の状況を教えてください
3.木考会はインテリの集まりだったのですか
4.木考会ではどんな話をしていたのでしょうか
5.なぜ毎月、相当の数の人が集まっていたのでしょうか
6.木考会には女性の作り手も参加していたのですか
7.発起人の竹野広行さんはどんな人物だったのでしょうか
8.いまの時代に木考会は必要でしょうか
9.いま30代だったら、どんなスタイルの木考会を開きますか
10.木工を仕事として継続するためには何か必要ですか

これらの設問に対する回答の一部をご紹介します。

「こういう生き方があるんだという情報交換もしていました。作り方はわかるけど、何をつくればいいかわからない、あるいは作りたいものがあるけれど、作り方がわからないといった思いを持っている人が多くいました。Facebookもない時代に、そういう場が必要だったと思います」(須田賢司さん・木工藝家)

「企業の中で仕事をすることに疑問を持っていたときに、それぞれが自分の生き方を話すのを聞くだけでも勉強になりました。こういう生き方もあるんだと教えてもらい、知らない世界ばかりで自分の生き方を考えるきっかけを与えてもらいました」(谷恭子さん・スタジオKUKU主宰)

「高度経済成長の中でこれまでの価値観に疑問を感じながらも、ではそれに対して自分たちはどういう生き方をすればいいんだろうか、とみんなが考えていた時代だっだと思います」(谷進一郎さん・木工家)

「発起人の竹野広之さんとは、小学校・中学校が一緒で、高校から学校が分かれてもお互いに泊まりに行くような仲でした。曲がったことは大嫌いだけど、分け隔てなく人と接するとても大きな人でした。会報『黙木(モクモク)』はほとんど竹野さんひとりで、毎回楽しんで書いていました」(光野有次さん・有限会社でく工房取締役会長)

「ここ数年、海外での木工家たちの学びの形を見てきました。アメリカでは木工家たちが主導してNPOを立ち上げ、技術交流やビジネススタイルをシェアする場を作っています。そこには木工家だけでなく、材木業や機械業、バイヤーなど木工に関わるすべての人が集まります。木工を盛り上げるには、周囲の人も含めてそれぞれが持っている知識をオープンに発表し合う場が必要だと感じました。自分もそういう場をつくりたいと思って、山梨でみんなで学ぶ工房の設立準備を始めています」(吉野崇裕さん・工房木夢主宰)

光野有次さん・有限会社でく工房取締役会長

約6年間の活動を経て、次第に集まることが少なくなっていった木考会ですが、それは各自がそれなりに自立し、仕事が忙しくなったためだったようです。しかし発起人である竹野広之さんの思いは、さまざまな形で受け継がれています。たとえば、展示会活動を中心とした信州木工会、名古屋で毎年夏に行われている木工家ウィーク、そして全国で情報交換ができるネットワークを作ろうと始められた木工家ネットなど、現在でも様々な活動が続けられています。

木考会とは何か、意見を交わす中で、木考会メンバーのひとりが発言した「広場」というキーワードが印象的でした。会長や代表がいるわけではなく、志を同じくする若者たちがつながりを求めて自然と集まってきた広場、それが木考会だったようです。SNSの発達した現代ですが、画面を通してではなく顔を突き合わせて話せる場が今の時代にも必要だと感じました。

「あのころの皆に共通していたのは損得抜きで出会いを求めていたことだと思います。『求めて』いたのです。誰に強要されたのでもなく、自分が求めたからこそすばらしい仲間と出会えたのだと思います。若い次世代にも現実世界での出会いを求めてほしいですね」(須田賢司さん)

木考会メンバーが書いた書籍なども作品と一緒に展示された。
photo&text:宝樹恵(グループモノ・モノ)

2017.05.05 Friday | イベントレポート

トークイベント「秋岡芳夫のDIYデザイン」レポート

去る4月22日、モノ・モノにてトークイベント「秋岡芳夫のDIYデザイン」を開催しました。テーマは、秋岡芳夫らKAKデザイングループが、1953年に出版した『アイディアを生かした家庭の工作』という書籍です。

伊藤暁さん
ゲストスピーカーの伊藤暁さん

今回のゲストスピーカーは、建築家の伊藤暁さん。2011年に目黒区美術館で開催された秋岡芳夫展で『家庭の工作』に魅了されたことをきっかけに、自ら家具の制作を行うなど、秋岡芳夫の家具を研究されている方です。

『家庭の工作』では、身の回りの日用品を、手に入りやすい木材を中心に、少ない道具で楽しく作るためのアイデアがわかりやすくまとめられています。会場には同書のページのカラーコピーや、伊藤さんの事務所で実際に作られた椅子を展示。

建築やデザイン関係の方から、昔の秋岡芳夫を知る方まで幅広い方々にお集まりいただき、さながら大人のゼミといった雰囲気で活気にあふれたイベントとなりました。

会場の様子

『家庭の工作』は60年以上前に出版された本ですが、伊藤さんは「紹介されている家具のデザインがいま見てもかっこよく、モダン」だと言います。

「ただかっこいいだけではなく、身近で買える素材で作ることができ、それでいて作りやすさや強度がきちんとあるんです」

素材の使い方や組み合わせ方、部材の形などが驚くほどうまく統合されていることに感じ入ったという伊藤さんは、建築の基礎を学ぶための研修として、事務所の新人には『家庭の工作』の家具を作らせているそうです。

さらに、伊藤さんは『家庭の工作』とイタリア人工業デザイナー、エンツォ・マーリが出版した“autoprogettazione?”(1974年出版)との類似点を指摘します。

「エンツォ・マーリはハイブランドの家具デザイナーでしたが、この“autoprogettazione?”は『家庭の工作』のように、ありふれた材料でイスやテーブルを製作するというDIY家具の指南本です。ちなみにautoprogettazione?とは、自分で家具をつくってみよう、という意味だそうです」

これらふたつの本の出版には20年ほどの隔たりがありますが、両者の共通点として当時の社会状況があるのではと伊藤さんは考えているそうです。『家庭の工作』が出版された1953年の日本は、経済成長に突き進もうとする好況の時代。一方1974年頃のイタリアは深刻な経済危機にありました。

一見正反対な経済状況ですが、どちらも平常ではない極端な状態にあった、ということは同じです。そうした時代に「誰かに作ってもらったもの」に頼る生活は、経済や社会状況に大きく左右されてしまいます。しかし「自分で作る」という発想は、自分でコントロールできる生活の範囲を手許に留めることにつながります。こうした思いで両者がDIYの本を出版したのではないかと伊藤さんは考えたそうです。

「秋岡さんの著作では『暮らし』というワードをよく見かけますが、それは秋岡さんが形に凝るのではなく、自分のデザインがどんな暮らしを作っているのか考えたからだと思います。単なる物のデザインではなく、使われる状況を想像できている証が、これらの著作なんじゃないかと思うんです」

会場には椅子も持ち込まれた

伊藤さんの事務所で作られた両者の椅子は、「作ってみたら大きさや重さが全然違った」と伊藤さんが言うように、エンツォ・マーリのものは無骨。秋岡芳夫のものは華奢、という印象を感じさせるものでした。セミナー終了後、参加者の皆さんはそれらの家具を囲みながら、楽しくデザイン談義をされていました。

セミナーの終盤、参加者の中にいた秋岡芳夫の教え子の方が登壇され、秋岡芳夫の次のような言葉を紹介してくださいました。

「自分のほしい物を自分でよく考え、自分でつくり、要すれば自分の道具をよく工夫し、心をこめてつかって見て、気に入らぬところを又よく考えて直し、納得の行くまでつくり直し、それを愛用する…それが人間の物づくりの原型!」

秋岡芳夫の「消費者ではなく愛用者になろう」という哲学の根本がこのメッセージの中にはある、そう強く思いました。

photo&text:宝樹恵(グループモノ・モノ)


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